2015年12月に陝西省咸陽市彬県にある世界文化遺産「彬県大佛寺石窟」に行った。
午前中、太陽が高く昇り始めていても、冬の冷え込んだ空気が肌を刺す。
彬県は西安市内から車で北へ2時間ほどの場所にある山合の小さな街だ。
遠くに見える街はずれの工場の大きな煙突が寒空に白煙を吐き出している。
この街の経済を支えるシンボルと言えるかもしれない。
「彬県大佛寺石窟」はこの街の新しいもうひとつのシンボルだ。
2014年6月にユネスコの世界文化遺産「シルクロード」の内のひとつに指定され、
今後人気観光スポットとしての経済効果が期待されるからだ。
「大佛寺」と大きく書かれた門前で入場券を買っていると、線香売りのおばさんに声をかけられた。線香の束を差し出して購入を促している。このような時、もし買う気がなければ相手にしないのに限る。
買うつもりもないのに面白半分で相手にしていると、 思わぬトラブルに発展する場合がある。何しろ向こうは生活がかかっているのだから。
入場門から一歩中に入ると見晴らしのよい広場に出て、
石窟の全貌を見渡せる。正面の3階部分辺りに楼閣が配置され、
左右に数十はあろう空洞が見える。これだけ掘削するのにどれだけの人間が関わり、
どれだけの年月が費やされたのか。中国のその壮大な文化遺産を見るたびに感じることだ
この石窟の歴史は唐代までさかのぼる。
628年、唐の二代太宗・李世民が戦死した兵士の供養のために建立し、
建立当時は応福寺と呼ばれた。「大佛寺」と呼ばれるようになったのは明代以降になってかららしい。大小様々な部屋の中でも特に見応えがあるのは、
千仏洞と呼ばれる奥行きのある室内の壁一面に掘られた壁画や仏像群である。
金網や鉄格子で仕切られていないため、間近でじっくりと眺めることができるのは当石窟の大きなポイントだ。
今後の観光客の増加によって事情は変わってくるかもしれないので、ぜひ早めの訪問をオススメしたい。
そして当石窟のメインを飾るのは、入場券の写真にも採用されている、石窟の中心に位置する大仏だ。
この大仏は屋内にあるため、長年の風化にも耐え、彩色された様子も残る極めて保存状態がよいものなのだ。
しかし残念なことに、この大仏の安置されている一階部分の部屋が施錠されていたために、二階窓から顔部分しか眺めることしかできず、
その全体像を見ることはできなかった。大仏を眺めるのが好きな人間としては大変心残りだった。
他の各地の石窟でも言えることだが、石窟の中には扉が施錠されていて観覧することのできないものも多い。
研究や改修作業など諸事情があるが、中には別料金で見せてくれるものもある。当石窟でも、百三十はあるとされる部屋の半分以上は未公開だったと思う。
管理上の問題もあるかもしれないが、ぜひ今後は公開部分を増やしていってほしいと思う。
休日だが人もまばらであったため、公開されている部屋を全てゆっくりと見学することができた。
滞在時間は1時間強といったところ。やがて宣伝などが盛んになって観光客が増える前に訪問するのがよいだろう。
先にも述べた通り、金網が張られていて壁画や仏像をじっくり見られない石窟もある中で、当石窟はまだそのような処置が取られておらず、
ごく自然な形で公開されていることは大きな魅力だ。
再び入場券を買った場所に戻ると、あの線香売りのおばさんがまだおり、私を見つけて近づいてきた。
見学を終えた者にも売りつけようとする商魂の逞しさは見事だ。観光地を見学するだけでなく、
このようにそこで生活をする人々との交流(?)も中国を観光することの醍醐味だ。線香は結局買わなかったけれど。
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